企業の資本政策を『感想戦』のように振り返る本を出します
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企業の資本政策を『感想戦』のように振り返る本を出します

 noteで発信していた「資本政策の感想戦」シリーズをベースとして、日経BP社から「実践スタートアップ・ファイナンス 資本政策の感想戦」が2021年10月7日に販売されます。

 新規株式公開(IPO)をしたスタートアップ6社を題材として、設立から上場までに行われたイベントを、「資本政策」の軸から整理して解説した本になります。

 資本政策とは、株式や新株予約権といった『エクイティ』を企業が有効活用するための計画を指します。
 本書では、実際の企業がどのようにエクイティを用いて、資金調達を行って、共同創業者を招き入れて、従業員にインセンティブを付与したかを確認しています。設立時から上場に至るまでに行われた全取引を題材として、1資本取引ずつ追跡しながら考察しています。

 これからファイナンスを勉強される方・資本政策を検討される方・起業する方の助けになることを目指して本書を書いています。

いただいた書評

1.書籍化にあたって大きく変わった内容

 主にnoteを購入いただいた方々に対して、note版との変更点について説明をさせてください。

『資本政策の感想戦』シリーズでは、実際に行われた資本取引を取り上げて解説を行っています。その各資本取引の解説で用いる表について、全て書き直しています。
note版では、実務で用いる資本政策表をベースに作成した図表を掲載していました。資本取引時点での株主等が、それぞれ個人・個社別にどの程度エクイティを有しているのかを確認する上で適している形式です。
 書籍版では、この図表を全て書き直しました。①株主の属性(「創業者」「外部投資家」など)ごとの持分比率を表す表と②取引に登場する株主のみに関する表、の2つを掲載しています。

以下に、全く同一の取引に関して、note版/書籍版を横に並べました。

 noteで掲載している表は、実務で用いられるフォーマットに準拠している点からは実務に適用しやすい利点がありますが、情報量が多い表であるため情報を正しく読み取る難易度が高いものとなっています。
 書籍化に際して、取引の意思決定がどのように行われたのかについて影響を与えやすい情報を組み上げやすい表を掲載することを目指しました。「そもそも取引する相手は取引結果どのような持分比率となったのか」「取引の結果、組織内部(創業者たちや従業員)の持分比率はどの程度になったのか」、という情報が各取引ごとに読み取れることを目指しました。

2.そもそも何故「資本政策の感想戦」を書いたのか

 本noteの後半部分では、本書を書き終えた段階でのこれまでの振り返り(「『資本政策の感想戦』の感想戦」というのでしょうか)を行います。そもそも何故このようなnoteを書き始めたのかについての動機や、最初のnoteを書くきっかけから書籍化に至るまでを書き記します。

2-1.はじめた経緯

(1)なぜこういうのを書いているか

「資本政策の感想戦」の骨子は、資本取引を1取引ごとに分解して1つ1つ考察する作業です。この作業は、自分が資本政策を勉強するために1人で行っていた学習方法でした。

 資本政策に関する専門知識は「起業のファイナンス」「起業のエクイティ・ファイナンス」という良書があったことでかなりフォローアップが楽にすすみました。また、資本調達の実務に恵まれる機会が多く、その際に行った投資家・起業家・専門家との会話を通じてかなりのものを学ばせてもらいました。
 この学習方法を開始した当時は知識をある程度身に着けたことで、ダニング・クルーガー曲線でいう「何もわからん」状態に陥っていました。それを脱却するために行った学習方法の1つが、本書のような検討をすることでした(本書を書き終えた今現在も、その状態を完全に脱却していません)。

 1人でせっせと各社の有価証券報告書や登記簿謄本を読み漁り検討を行っており、2018年にそういう作業を「感想戦」と名付けていました(当時のTwitter)。

 この学習方法を自力で行うのは中々の手間です。検討する前に、検討対象となる資本取引を、登記簿謄本や有価証券報告書から抽出する作業が必要になります。また、検討に際して背景知識を調べなければ、何故こんな取引をやったのかというのが理解することもできません。

 本書では、これから資本政策を学習しようと思っている方に向けて、同様の学習方法をするために必要な抽出作業・調査の手間を省くべく、検討に必要な材料を用意しておくことを意識して執筆しています。
 外部情報から推測可能な範囲で資本取引を推定・特定して示し、資本取引を読み解くための背景知識についてインターネット上で調べられる情報をまとめています。

 本書は、学習用のケーススタディ教材としても活用いただけることを目標としています。本書記載のこれらの情報を活用して、どのような意図でこの取引が行われたか考察して学習に役立てていただければ嬉しいです。

(2)noteに「資本政策の感想戦」を投稿したきっかけ

 2018年、note上に初めて投稿したラクスルの上場を評する記事が想定より多くの人に読んでいただきコメントも多数頂戴したことで、「学習に役立つ情報は積極的に開示しておこう」と考えるようになりました。

 自分のための学習目的で行っていた「資本政策の感想戦」をnote上に投稿したきっかけは、インターン生に対する指導でした。

 当社1人目のインターン生として在籍していたRさんに対して、Ⅰの部を用いた資本取引の学習方法(「感想戦」)をどのように行うか説明する機会がありました。教えた日の直前に上場承認された「識学」を教材として、Ⅰの部から資本取引を抽出する作業を実演し、その場で抽出した取引の解説を行いました。

「学習に役立つ情報は積極的に開示しておこう」という考えがあった中で、第三者(=インターン生)に解説するための成果物が手元にあったことから、それをまとめて投稿することを思い立ち、「資本政策の感想戦」最初のnoteを作成しました。

2-2.感想に支えられてシリーズ化

(1)有料で書いた理由

 最初の投稿を行う前に、「資本政策の感想戦」は1作目からnoteを有料化することを決めていました。

 学習用のコンテンツとして・企業を深く理解するためのコンテンツとして発信するに値する内容は執筆できたと思っていたのですが、同時に、気軽に拡散されていい内容ではないとも思っていました。

 完璧な資本政策で上場した企業はありません。noteの性質上、1取引・2取引に対して懐疑的なコメントを書くこともあります。それは、上場までたどり着いた偉大さを毀損させるものではないのですが、誤った印象が持たれる事態は防ぐ必要がありました。
 また、解説の性質上、開示されている書類に基づくとはいえ個人名を取り扱います。多くの人に記事が読まれることは自分の承認欲求を満たす側面があります。無料で公表した方が、多くの人から強い興味をもってもらうことはできたでしょうが、個人名は自己の承認欲求を満たす目的(=View数獲得のため)に取り扱っていい情報ではありません。

 そのため、スタートアップ企業の資本政策の解説というコンテンツを、有料のnoteを購入してまでも見てみたいと考えている方にのみ届けるべく、料金設定をして公開しました。

(2)noteの感想をみてシリーズ化

 有料で情報を提供する以上、そのコンテンツの質に対して責任が生じます。有料のnoteを購入する人は、限られた情報(概要・タイトル・note内の無料範囲)を見て購入の判断をします。
 noteの情報量・書き方・伝え方・調べ方が、その限定的な情報から生じた期待に応えられているかどうか、コンテンツ公開後すみやかに確認する必要がありました。

 この点、SNS(主にTwitter)上で感想を投稿いただいた方々に、かなり助けられました。ありがとうございます。

 投稿いただいた感想を読んだこと、感想を書いていただいた人とのDMなどを通してシリーズ化して継続的に書いていこうという意思決定ができました。
 シリーズ化を行う意思決定を後押ししたTweetは数多くあるのですが、当時心に残ったTweetを何点か紹介します。

1)高校の同級生から
 (初っ端から内輪ですが)高校の同級生から。はじめてnoteを有料化した際に最も避けたかったポジションが「質の低い記事を質を高そうに偽装して、無知識な人に騙すように高値で売る」でした。記事の質ではなく記事の立ち位置に言及してくれたこの感想には、心理的に助けられました。

2)面識ある起業家から
 当時「謄本を打ち込む1dayインターン」という、変わったインターンを募集していた時に遊びに来てくれた若手起業家のTweetです(余談だが、2021年にサービスをローンチしている。応援しています)。
 値段設定については仮置で、受け入れてもらえる価格帯の中ではやや低めと思った値段に設定していたので、このTweetで「(自分の感覚が的外れで)高すぎる設定だったらどうしよう」という不安が解消されたことを覚えています。

3)金融系のアカウントから
 直接面識はないのですが、金融系で専門的な知識について普段からTweetされている方(最近は乃木坂推しアカウントの側面も強いですが)の感想も、お金をとって配信することの適切性を確かめる観点から嬉しかったです。
 noteにつけている値段は世の中の書籍と比べると高価です。週刊少年ジャンプが300円以下で買える時代に1000円以上するnoteを売っていることは自覚したほうが良いでしょう。

 Twitterの感想についてすべて紹介したい気持ちもあるのですが一旦ここまでとします。肯定的な感想のみ紹介しましたが、改善点や不足点の指摘についても助けられています。
 感想を投稿いただいたことをきっかけに、読者が読み飛ばしている箇所や、もっと書いてほしい情報を知り、回を重ねるごとに記載方法の改善を図ることができています。

書籍が出たあとも、書籍に対する感想等を、SNSでもAmazonレビューでも直接自分宛でもいただければ、とても嬉しいです。

2-3.書籍化の経緯と謝辞

 最後に書籍化の経緯などについて書きます。

 シリーズで書いていたnoteが書籍化されたことは、10年前(2011年)に亡くなった翻訳家だった父・山岡洋一から繋がれた縁によるものです。亡父は、「ビジョナリー・カンパニー」「巨象も踊る」「国富論」など、ビジネス書・経済書の分野で(当時学生時代の自分には半分わかっていなかったのですが)影響力があった書籍の翻訳を手掛けていました。

 葬儀の際に、多数の翻訳・出版業界の方々にお世話になりました。その時からご縁があり、父の担当編集者だった日経BP社の黒沢正俊氏にお話をいただき、今回の書籍化となりました。書籍化に伴い、こだわりが強い自分の意見主張に対して、粘り強くお付き合いいただきました。誠に感謝しております。

 また、黒沢氏が今回書籍化の話を打診いただいた背景には、金融経済読書会を主催するFED(Financial Education and Design)を運営する村上茂久さん、村上由貴子さんのご夫妻の推薦があったと聞いています。これまでのnoteに対する支援も含め、誠に感謝しております。もともとお二人とは、父を追悼するという名目で開催されたFEDの読書会(課題図書は「自由論」)に参加したことがきっかけで知り合いになりましたので、亡父のつないでくれた縁でした。

 自らの実力ではなく、他の方々の支援を受けて何かを実現した人が担うべき責務は、他の誰かが何かを成し遂げることに対して支援することだと考えています。
 本書は、これからファイナンスを勉強される方・資本政策を検討される方・起業する方の助けになることを目標として書きました。本書がきっかけで何か良い循環が生じれば、それに勝る喜びはありません。

 本書以降も継続して、社会の発展に資するような情報発信を目指して、諸々の情報発信を継続できればと考えています。


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note新エディタ

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株式会社シクミヤが運営する、資本政策・資金調達・経営管理に関するnoteです。 「資本政策の感想戦」「FUNDING FACTBOOK」を不定期掲載