FUNDING FACTBOOK「みんな電力株式会社」


「FUNDING FACTBOOK」は、資金調達ニュースの対象となった非上場企業の調達情報を、登記簿謄本を確認し、その調達内容を詳細にスキームまで解説するnoteです。

この記事では、2019年1月18日に資金調達を行った「みんな電力株式会社」の資金調達内容について取り扱います。

みんな電力株式会社は、個人や小規模事業者が発電した電力を消費者が購入できるようにしたプラットフォームを運営している会社です。
プレスリリースで発表された11億8000万円の調達は、同社が過去これまで行った調達と比べても大規模なものとなっています。
当該記事では、その調達の背景の説明をビジネスの状況を確認し、説明しています。

1.プレスリリースについて

概要
 プレスリリース日 2019年1月21日
 その他媒体    TechCrunch
 発表調達内容
  金額 11億8000万円
  方法 記載なし
  投資家 TBSイノベーション・パートナーズ合同会社,
      SBIインベストメント株式会社, TOKAIホールディングス, 
      セガサミーホールディングス株式会社, 株式会社丸井グループ,
      株式会社電通
 実際調達内容
  資金調達日 2018/8/30,2018/12/14
  合計金額  11億8000万円
 PRのタイミング 登記完了後
 登記完了後からPRの日数 31日

プレスリリースの解説

プレスリリースの対象となったラウンド上、2018/8/30・2018/12/14の2回に分けて計11億8000万円の調達を行っている。
自社からのプレスリリースは、自社HP上で行っている。同日にTechCrunchに調達に関する記事が掲載されており、メディアでの掲載に合わせたプレスリリースを行ったと推測される。

自社HPによるプレスリリースは調達の事実を伝える簡易的なものなのに対して、TechCrunchのニュースでは、サービス内容等を詳細に伝える内容になっている。

2.今回のラウンドの背景

事業の特徴
みんな電力のメイン事業は、個人などの電気生産者から供給された電力を、ユーザーが利用するようにしたサービスだ。
サービスページ上、ユーザー側から電気生産者の顔が見えるようになっており、ユーザーはそのページ上で選択した電気発電者に対して支援(寄付)することができる。

元々のコンセプト上目指していることは、ユーザーが自身が使う電力について、どの電気生産者が作った電力なのかを判別する仕組みである(2015年12月の代表者インタビューより)。
これまでの技術上、提供された電力が電気の利用者にどの程度利用されたかを把握することはできなかった。従って、画面上で電気発電者の支援(寄付)を選択して行う仕組みは、目指したコンセプトを達成する途上だろう。

今回の調達の背景は、当該事業に関連する新技術だ。
 2018年12月05日に、電力需要者の需要量と供給者の供給量を1対1で結びつける「ENECTION2.0」を発表しているTechCrunchの記事も参照すると良い)。

この技術は、みんな電力の主力事業が目指す事業コンセプトに密接に関連するが、その他の事業に対する拡張可能性も高いだろう。

例えば、電気自動車含む小口の電力供給者による電気網により、都市部の電気需給調整を効率的に行うスマートグリッド構想上、電力のトレーサビリティ技術の必要性は主張されており、今回のNEMブロックチェーン技術がスマートグリッド構築に資する可能性がある。

投資家の概要
今回のラウンドに参加した投資家の中心は事業会社だ。電気供給側・利用側の両方がラウンドに参加している。

エネルギー産業を営む企業    :TOKAIホールディングス
ENECTION2.0の検証に参加した企業:株式会社丸井グループ
その他事業会社           :TBSイノベーション・パートナーズ合同会社, セガサミーホールディングス株式会社,株式会社電通
VC                :SBIインベストメント株式会社

この中で丸井グループは、ENECTION2.0の実証実験に参加しており、同技術に対する期待感が伺える。

チームならびに機関の特徴
創業時共同代表を勤めていた布施氏が、2018年8月に退職(代表取締役は2016年3月に辞任)している。

当ラウンドの位置付け

登記簿謄本を読む限り、当ラウンドに至るまで、4回にわけて資金調達を実施している。

Seed  2011/8-2012/31 調達額1700万円 PreValuation 300万円
PreSeriesA  2013/12-2014/09  調達額6800万円 PreValuation 2億円
SeriesA 2016/09-2017/06 調達額2億1400万円 PreValuation10億1840万円
PreSeriesB 2017/12 調達額1億9600万円 PreValuation10億1840万円

創業直後に行ったSeedラウンドは主として内部メンバ向けのラウンドだったと推測できる(設立時株数60株に対してこのラウンドでの発行数が340株に達している)。
PreSeriesAラウンドまでは普通株式による調達を行っている。
前述の通りSeriesAラウンドではA種優先株式を新たに用いて調達を行っている。
PreSeriesBラウンドでは、転換社債型新株予約権付社債を用いた調達を行っている。

3. 資金調達について  種類株の設定について

調達手法
 調達方法  第三者割当増資
 株種類   B種優先株式
 調達時期  2018/8/30,2018/12/14
 調達金額     1,180,000,000 円
 PreValuation  2,568,000,000 円
 累積調達額  1,673,165,000 円

調達手法について
当該ラウンドは、2018年8月末日と12月の2回にわけて実施された。
前述のELECTION2.0の開発が完了した時期は2018年9月とされており、当該開発完了〜先行利用試験の完了の時期に行われた調達となっている。

2016年から2017年にかけて行われたSeriesAラウンド(Pre10億円、2億円調達)、2017年末に行われた転換社債型新株予約権付社債の発行(2億円調達)に続く3回目の大型調達となっている。

調達に際して「B種優先株式」を新規に用いている。SeriesAラウンドで「A種優先株式」を用いており、B種優先株式の設計はA種優先株式の設計を踏襲している。

優先残余財産分配権は両株式とも×1.0倍参加型の設定。
優先分配権は、A種とB種を同列で扱う同順位型ではなく、A種に先んじてB種株主が残余財産分配を行われる設定となっている。
当該設定は、本件は以下状況を鑑みた結果行われたものと考えられる。

① SeriesA Roundと比較して当ラウンドの調達額は6倍と金額規模に差異があること
② 資金調達前すでに株主資本がマイナスであったこと(下記にBSを載せている)

4. 決算状況

2018年3月期のBSが公告されていたため簡単なコメントをする。
みんな電力株式会社は、一般的な電力会社と異なり一般的な貸借対照表を開示している(電気事業会計規則による報告が必要な場合、固定資産→流動資産の順番でBSを作成する)。
総資産10億円に対して固定資産の計上額は2億円にとどまっており、多額の固定資産への設備投資は行っていない。

5. 過去の新株予約権について

みんな電力株式会社はこれまで8回新株予約権を発行している。特徴として、①有償SO②無償SO③転換社債型新株予約権付社債 の3種類を発行している(下記)。

また、有償SO間・無償SO間・転換社債型新株予約権付社債間で細かく設計を変更している。

有償SOについて
第1回・第3回として発行された有償SOに着目すると、両方とも株価条件を付している(=株価が一定以下になると行使できない)点では共通している。

株価条件の設定方法は異なり、第1回では基準となる株価は行使価格とされていたのに対して、第3回ではSO割当日から1年経過後から、基準となる株価を行使価格の2倍とするように設定なされている。

これまで発行したSOの対象株式数をみると、有償SOの割合が非常に高く(発行済株式総数の15%強の株式を発行できる計算になる)、有償SOを中心としたインセンティブ設計を行っていることが伺える。

無償SOについて
第2回・第4回・第5回・第8回と4回発行した無償SOの使い方も特徴的だ。
SO付与対象者が付与時に当該会社の役員ないし従業員であることが、無償SOが税制適格となる要件の1つとなっている。そのため、税制適格SOを付与できない①監査役②社外協力者に対しては、有償SOを付与することがある。

これに対して、みんな電力では、身分保持条件を見る限り無償SOを①監査役(第2・第4・第5回)②社外協力者(第4回)に付与していることが伺える。

また、第8回では特定の行使条件を定めない無償SOも発行している。これは、発行時と同一株価による追加での投資のオプションを投資家に付与するSOであり、個人に対するインセンティブとして付与した他の回と、役割が異なるだろう。

転換社債型新株予約権付社債
第6回・第7回では、転換社債型新株予約権付社債を発行している。

「直前のSeriesAラウンドの株価=1,900円」「次回ラウンド(2億円以上の調達が対象)の株価を30%ディスカウントした株価」のいずれか高い方で転換されるように設定されている。

この2種類の新株予約権付社債は全く同日に発行されているが、第6回と第7回で行使期限を変えていることが特徴的だ。
次回の資金調達が成されない状況で行使期限を迎えた新株予約権付社債は、「直前のSeriesAラウンドの株価=1,900円」で転換されることになる。

行使期限が長いほど、行使価格が上がる(=投資家が転換後に得られる株数が少なくなる)確率が増加するため、社債部分の条件に差異を付けた可能性があるが謄本上から伺いしることが出来なかった。

新株予約権まとめ
最後に、各回の行使条件を以下にまとめた。第3回については条件が複雑なため、謄本の文言をそのままnoteの最後に記載している。

まとめ

所感を以下に記載する

・ラウンドの背景にあった新技術「ENECTION2.0」は、述べた通りスマートグリッドの文脈でいうと革新的と言える内容に見える。
対して、「野菜のように産地がわかる電気を売っている」というような事業説明をしているが、事業価値が適切な人に伝わらない可能性があると、個人的に思った。
・資本金額が1億円を超過しているが、節税のため減資は検討して良いだろう。
・(note内記載していないが)発行可能株式総数は1億株と再設定が不要な設定となっている。
・新株予約権を多岐に使い分けており、それぞれ何を期待して発行したかについての社内からの説明を聞きたい。

補足:第3回行使の条件

新株予約権の行使の条件
① 新株予約権の割り当てを受けた者(以下、「新株予約権者」という。)は、本新株予約権の行使期間において次に掲げる各事由が生じた場合には、新株予約権者は残存するすべての本新株予約権を行使することができないものとする。
(a)以下の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する期間に、1株当たり(ⅰ)又は(ⅱ)の金額を下回る価格(1円未満切り上げ)を対価とする当社普通株式の発行等が行われた場合(払込金額が会社法第199条第3項・同第200条第2項に定める「特に有利な金額である場合」を除く。)。
 (ⅰ)本新株予約権の割当日から1年を経過する日まで、行使価額
 (ⅱ)本新株予約権の割当日から1年を経過した日の翌日から本新株予約権の行使期間満了日まで、行使価額の200%に相当する額
(b)本新株予約権の目的である当社普通株式が日本国内のいずれの金融商品取引所にも上場されていない場合、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する期間に、1株当たり(ⅰ)又は(ⅱ)の金額を下回る価格を対価とする売買その他の取引が行われたとき(但し、当該取引時点における株式価値よりも著しく低いと認められる価格で取引が行われた場合を除く。)。
 (ⅰ)本新株予約権の割当日から1年を経過する日まで、行使価額
 (ⅱ)本新株予約権の割当日から1年を経過した日の翌日から本新株予約権の行使期間満了日まで、行使価額の200%に相当する額
(c)本新株予約権の目的である当社普通株式が日本国内のいずれの金融商品取引所にも上場されていない場合、各事業年度末日を基準日としてDCF法ならびに類似会社比較法の方法により評価された株式評価額が以下の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する期間に、1株当たり(ⅰ)又は(ⅱ)の金額を下回ったとき。
 (ⅰ)本新株予約権の割当日から1年を経過する日まで、行使価額
 (ⅱ)本新株予約権の割当日から1年を経過した日の翌日から本新株予約権の行使期間満了日まで、行使価額の200%に相当する額
(d)本新株予約権の目的である当社普通株式が日本国内のいずれかの金融商品取引所に上場された場合、当該金融商品取引所における当社普通株式の普通取引の終値が、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する期間に、(ⅰ)又は(ⅱ)の金額を下回る価格となったとき。
 (ⅰ)本新株予約権の割当日から1年を経過する日まで、行使価額
 (ⅱ)本新株予約権の割当日から1年を経過した日の翌日から本新株予約権の行使期間満了日まで、行使価額の200%に相当する額

② 新株予約権者は、新株予約権の権利行使時においても、当社または当社関係会社の取締役、監査役または従業員であることを要する。ただし、任期満了による退任、定年退職、その他正当な理由があると取締役会が認めた場合は、この限りではない。 
③ 新株予約権者の相続人による本新株予約権の行使は認めない。
④ 各本新株予約権1個未満の行使を行うことはできない。     

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FUNDING FACTBOOK vol.003

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