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資本政策の感想戦「株式会社プレイド」

企業が新規株式公開(IPO)を行った場合、その企業が作成した「新規上場申請のための有価証券報告書(以下「Ⅰの部」という)」を見れば、その企業が上場までにどのような資本取引を行ってきたかを伺い知ることができる。

このnoteは「資本政策の感想戦」と銘打ち、第三者の視点から、創業から資本取引を将棋の棋士が行う感想戦のように1手1手振り返り、その背景で動いていた資本政策の意図を考察することで、資本政策に関する学びを得ることを目的として書いている。

このnoteは、会社が公表したⅠの部並びに登記簿謄本、各種インターネット上で閲覧可能なプレスリリースや記事等を主な情報源として記載しており、公表された情報を元として、客観的に推測可能な枠内で各回の資本取引内容について考察を行っている。

取り上げる企業:株式会社プレイド

このnoteでは、2020年11月12日に上場承認され、2020年12月17日に上場する株式会社プレイドを題材として、資本政策の意図を考察する。

株式会社プレイドは、楽天出身の倉橋氏・石黒氏(2012年8月退社)の2名による共同創業により設立された。プレイドは、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を運営する企業として知られている。

このnoteで、創業から上場するまでに行った資本取引について、事業や組織状況などの背景を踏まえて1取引ずつ振り返る。プレイドの資本政策の考察を通して、
・種類株式を活用してエクイティの力を最大限活用した調達
・事業上のステージに応じた調達手段の変更
を確認することができる。

資本政策の解説にあたって

上場時において株式会社プレイドは、メインプロダクトである「KARTE」を運営していることで知られている。創業当初は「KARTE」が担うWeb接客の分野には着手しておらず、同社最初のプロダクトである「foodstoQ」を運営していた。foodstoQは2012年にクローズしており、クローズ時に一度創業チームが解散している。「KARTE」はその後再度チームを組成した後に設計されたプロダクトであり、言い換えれば、第2創業期に開発されたプロダクトだ。

このnoteでは、株式会社プレイドの資本政策を振り返るに際して、『創業から創業時チームの解散』『「KARTE」の開発から上場時』まで区分して解説する。

また「KARTE」について同社のサービス展開の仕方に応じて期間を区分して解説する。「KARTE」は、ローンチ当初は”Web接客ツール”と銘打たれており、中小企業・小規模事業者でも利用可能なプロダクトとして位置づけていた。それに対して、上場時にはエンタープライズ向けの"CX(顧客体験)プラットフォーム"と、プロダクトを再定義している。

従って、KARTEの開発から上場時までを解説するに際して、「KARTEの開発から、同社がKARTEを"Web接客ツール"として位置づけていた時期まで(2013年から2017年まで)」と「KARTEを”CX(顧客体験)プラットフォーム”として位置づけてから上場までの時期(2018年から2020年まで)」と区分する。

<本noteの構成>
① 創業からfoodstoQのクローズまで(2011-2013年)
② 第2創業からKARTEの製品化の時期(2013-2017年)
③ KARTEのCXプラットフォーム化時期から上場まで(2018年以降)

①「創業からfoodstoQのクローズまで(2011-2013年)」の資本政策

□会社の状況

株式会社プレイドは2011年10月に、楽天出身の倉橋氏・石黒氏(2012年8月退社)の2名の共同創業者により設立された。『「Play」楽しいことや面白いことを、「Aid」さらに楽しいものにしたい(2012年2月時点同社HPから)』コンセプトから、「PLAID」という社名が付けられている。

「KARTE」の開発を開始する第2創業期に至るまでの、創業当時の状況について振り返る。

サービスの状況:「foodstoQ」のローンチとクローズ
創業者の倉橋氏は、楽天にてWebディレクション・サイト戦略の立案業務を担っていた。創業当初は倉橋氏は、ECのコンサルティングをしながら自社サービスの開発を行っていた。創業から4ヶ月経過した2012年1月30日に、プレイドの最初のプロダクトである「foodstoQ(フードストック)」をローンチしている。

「foodstoQ」は、行きたい飲食店のエリア・ジャンル等の条件を設定してアプリ上に質問を投げかけることで、他のユーザーから店舗情報を貰う「ソーシャルQ&A」という形式で飲食店情報を交換するサービスだ。このアプリを通じて、ユーザー動向を分析し店舗側に提供することを目論んでいた(記事)。

ローンチして2ヶ月後には、2012年3月30日に行われたピッチイベントである「第4回 SFNewTech Japan Night」の国内最終予選に出場して予選を突破しており(サービスのTwitterアカウントから)、2012年4月26日にサンフランシスコで開催された本戦に出場している。しかしながら、ピッチイベントに出場した数カ月後の2012年夏ごろに、倉橋氏は突如foodstoQをクローズすることを決めた(Webページは2014年までクローズが告知されることなく残存していた)。

組織・機関の状況:設立時メンバーについて
創業時メンバーは、共同創業者である倉橋氏・石黒氏の2名と、両者の楽天同期(2005年4月新卒入社)の高柳氏・エンジニアである佐久川氏の4名。全員創業時に取締役として登記されている。

石黒氏は「foodstoQ」のクローズが決まった時期にあたる2012年8月31日に、佐久川氏は2013年3月29日にそれぞれ辞任している。

この時期の従業員数について定かではないが、楽天出身の坂部氏が創業メンバーとして参画している

資本取引の概要:第1創業期の資本取引
全1回(設立登記)

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2011年10月3日に設立。foodstoQのローンチからクローズまでの間、外部調達は行っていない。チーム解散に伴い、株式譲渡を行った可能性はあるだろう。

□資本取引(全1回)の解説

■ No.01_2011年10月3日 設立登記

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取引概要:
手法 設立出資
発行株式数 100株
株価 50,000円/株
調達額 500万円
株主(推定) 倉橋氏、石黒氏、佐久川氏、高柳氏

コメント:
創業時役員複数名による設立出資と推定した。設立時における各人の出資株数を推定できる外部情報は見つからなかった。共同創業者である倉橋氏・石黒氏両名のみ出資を行い、社外取締役であった高柳氏・佐久川氏の出資は行われなかった可能性もあるだろう。

1株5万円で100株発行する形で、500万円の出資を実施している。後々の資本政策を考えると、株価を下げて発行株式数を増やしておいた方が良かっただろう。100株を発行した状態から新株を発行する場合、1株を付与された人の持分比率は約1%になる。すなわち、1%の粒度で持分比率を調整することになる。1%の粒度で持分比率を検討することが望ましい場合(少人数での運営を徹底する会社であれば許容できる)を除き、最低でも0.01%の粒度で持分比率が検討可能な、10,000株程度発行して会社設立することを検討したい。

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株式会社シクミヤが運営する、資本政策・資金調達・経営管理に関するnoteです。 「資本政策の感想戦」「FUNDING FACTBOOK」を不定期掲載