UUUM表紙

資本政策の感想戦「UUUM株式会社」

上場を目指すスタートアップはどのように資本政策を作れば良いのだろうか。多くの企業に共通する落とし穴はあれど、全ての企業に共通する”資本政策の成功パターン”というものは無いだろう。
各社ともにサービスの内容・サービスの状況・人員・文化・調達環境など、その会社ごとの前提条件が異なるため、各社でその会社にとっての最適な資本政策のパターンも異なる。

自社の資本政策立案時に他社の資本政策を参考にしようとしても、その内容を確認する手段は極めて限定的だ。この点、新規株式公開(IPO)を行なった企業を対象とすれば、新規株式公開に伴い作成した「新規上場申請のための有価証券報告書(以下「Ⅰの部」という)」に資本取引の情報が掲載されており、その企業が上場までの直近期間においてどのような資本取引を行なってきたかを伺い知ることができる。

このnoteは「資本政策の感想戦」と銘打ち、第三者の視点から、創業から資本取引を将棋の棋士が行う感想戦のように1手1手振り返り、その企業が直面していた状況と照らして検討することで、その背後で動いていた資本政策上の意図を考察し、資本政策に関する学びを得ることを目的として書かれている。

取り上げる企業:UUUM株式会社

このnoteでは、2017年7月27日に上場申請を受け、2017年8月30日にマザーズに上場したUUUM株式会社を取り扱う。

UUUM株式会社は、YouTuberのタレントマネジメントを行う会社で、日本有数のYouTuberが数多く所属していることで知られている。新規株式公開時において所属するYouTuberにストック・オプションを付与していたことが明らかになり、当時注目を集めた。

UUUM株式会社は2013年6月に創業し、第4期の会計期間(2017年5月期)が終了した後の、2017年8月に上場している。UUUM株式会社の資本政策を理解するために、UUUM株式会社が創業から上場までに行なった全17回の資本取引を対象として、会計期間ごとにサービスの状況、組織の状況、業績といった背景を確認しながら、1取引ずつ振り返っている。

創業から背景を含めて資本取引を振り返ることで、
・創業時株主構成がその後の資本政策にどういう影響を及ぼすか
・新株予約権を用いた内部向け(役員・従業員向け)のエクイティ・インセンティブ設計をどのように行うか
・エクイティを用いた資金調達のタイミングとその資金使途
を確認することができる。

なお、会社が公表したⅠの部並びに登記簿謄本を主な情報源として各資本取引を推定している。
サービスの状況並びに組織の状況については、役員・従業員を対象とした各メディア上のインタビュー記事やUUUM株式会社が発表しているプレスリリースなど、全ての人がインターネット経由でアクセス可能な情報を参照している。
一部、取引内容についてのコメント箇所について推定を交えた考察を記載しているが、推定箇所についてはそれと明確になるように記述を行う。

第1期(2013/6/27-2014/5/31)の資本政策

□会社の状況

サービスの状況:
UUUM株式会社は、現在ではHIKAKINをはじめとする専属YouTuberのマネジメント並びにMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)事業を営み、多数のYouTuberの活動をサポートすることで知られる。
創業した2013年6月当時の商号は「ON SALE株式会社」といい、YouTuberによる商品紹介を通したECサイト「ON SALE」を運営していた。

「ON SALE」事業では、YouTuberによる紹介経由で購入された商品の売上に応じた紹介料を得る、インフルエンサーマーケティングのはしりのようなビジネスを行なっていた。
「ON SALE」事業は”思ったよりもモノが売れない”ことから、開始3ヶ月で継続は難しいとの結論に至った。この期間にYouTuberとの仕事を通じてYouTuberマネジメントのニーズがあることに気がつき、同社は、2013年11月かYouTuberのマネジメントプロダクション事業を開始した。マネジメントプロダクション事業開始とともに「uuum株式会社」と商号を変更している(2014年12月に「UUUM株式会社」に商号を変更している)。

創業者の鎌田氏は創業前から、複数人のYouTuberの協力を取り付けており、8名のYouTuberが所属する形でマネジメントプロダクション事業を開始した。

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具体的なYouTuberの所属開始時期を上記表にまとめた。マネジメントプロダクション事業開始後の半年間は、1ヶ月に1−2人のペースで所属YouTuberを増やしている。
この期間において新たに所属するYouTuberは所属時のチャンネル登録者数が概ね10万人以上であり、UUUMがある程度ユーザーを掴んでいる状態のYouTuberを中心に勧誘していたことが伺える。

組織の状況:
機関の状況について説明する。創業第1期の時点で取締役会は設置しておらず、代表取締役の鎌田氏と、その前職上司にあたる服部氏が創業時取締役として名を連ねている。

第1期終了時点の従業員は17名。上場時の取締役を務める事業上のキーマンは入社していない。

第1期の業績:
YouTuberのマネジメントプロダクション事業の業績について、事業開始時から堅調に推移し、事業開始から3ヶ月経過した2014年2月時点で月次損益が黒字化していたことが明かされている(鎌田氏のnote「永遠のベンチャー「UUUM」創業物語」から)。

創業第1期の業績を確認すると、売上高1億6471万円・当期純損失△1870万円を計上している。
創業当初の「ON SALES」事業からYouTuberのマネジメントプロダクション事業に転換する際に2100万円を調達しており、初期投資を全て費消する前に黒字化するビジネスを作ることに成功したことがわかる。

なお、初年度から売上高が1億円を超えているが、YouTube広告費は全額売上高として計上され、そのうちYouTuberに対する支払(広告費の場合概ね80%)が売上原価として計上される。初年度は売上総利益は約4000万円(売上総利益25%で計算)、販管費は約6000万円程度だったと推定した。

資本取引の概要:
全5回(設立登記、第三者割当増資2回、株式譲渡1回、種類株式への転換1回)

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2013年6月の設立以降、エクイティを用いた資金調達(第三者割当増資)を2回実施している。

1回目の資金調達では、「ON SALE」事業からのピボットを決めた2013年10月に2100万円を調達している。2回目の資金調達では、YouTuberのプロダクションマネジメント事業の黒字化後である2014年4月に、事業拡大を目的として5億円を調達している。

□ 資本取引(5回)の解説

■ No.01_2013年06月27日 設立登記

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