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FUNDING FACTBOOK「株式会社Craftie」

「FUNDING FACTBOOK」では、資金調達ニュースの対象となった非上場企業の調達情報を、登記簿謄本を確認し、その調達内容を詳細にスキームまで解説する。

この記事では、2019年1月23日に資金調達を発表した「株式会社Craftie」の資金調達内容について取り扱う。

1.株式会社Craftieについて

株式会社Craftieは2016年4月15日に設立された会社で、2017年3月にサービスを開始したアート・クラフトのワークショップ予約サイト「Craftie」を運営している。

■ サービス(Craftie)について
Craftie」はアート・ものづくりのワークショップについて、①ワークショップに参加したい一般ユーザー ②ワークショップを開催したい教室登録ユーザーを引き合わせることを目的に運営されている。

ワークショップは教室を開催するユーザーの自前の施設で行われることを想定している。
教室を開催したいユーザーが自前の教室を持っていない場合であっても、株式会社Craftieが提携している場所(蔦屋書店、大手ショッピングモールなど)で教室を開催する機会がユーザーに提供されている。
Craftieに登録されたワークショップは、Craftieならびに公式SNS(2019年10月現在Instagram:フォロワー5700人Twitter:フォロワー220人)で宣伝される。

現在ユーザーからは利用料は取っておらず、2020年以降に有料化を検討している。

■ 財務担当者について
資金調達に関連するコーポレートスタッフを確認する。Wantedly上の採用ページで確認できる在籍メンバのうちコーポレートスタッフとして確認できた者は公認会計士の田畑氏1名。田畑氏は自信の会計士事務所を運営しながらパラレルワーカーとして働いており、専属・専任の経理・財務の担当者を雇用しているかどうか確認できなかった。

2.プレスリリースについて

概要
 プレスリリース日 2019年1月23日 09時00分
 その他媒体    TechCrunch, THE BRIDGE
 発表調達内容
  金額 1.1億円
  方法 記載なし
  投資家 グローバル・ブレイン株式会社, 複数の個人投資家
 実際調達内容
  資金調達日 2018/12/28
  合計金額  110,000,000 円
 PRのタイミング 登記完了後
 登記完了後からPRの日数 16日

■ プレスリリースの解説

FUNDINGFACTBOOKNo.3_クラフティ_スケジュール

プレスリリースは、資金調達から1ヶ月弱(26日)経過した2019年1月23日に発表された。プレスリリース当日にTech CrunchならびにThe Bridgeからニュースが流れており、資金調達後メディアに連絡して記事が出せるようになったタイミングでの発表であったことが伺われる。

このプレスリリースにあわせて、ワークショップに関わる法人向けのサービス「Craftie Partnership」を発表しており、当該プレスリリースは、ニュースバリューを持つ資金調達の事実を使ってサービスの周知を行うことが目的のように見える。
事実、プレスリリース並びに資金調達を取り扱った各メディアの記事上では資金調達についてはほとんど紙面を取っておらず、このCraftie Partnershipの説明が重点的に取り扱われている。

3.ラウンド前後の会社の取り組み

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株式会社Craftieがこの資金調達の前後に行った施策について確認する。
キーマンになる人の入社など人事に関する変化や、別のサービスローンチなどの事業に関する変化についてラウンド前後の施策は確認できなかった。

『2.プレスリリースについて』で述べた通り、「Craftie Partnership」という新サービスをプレスリリース上で強く打ち出している。
1つ留意すると「Craftie Partnership」は全くの新規サービスではない。ワークショップに関わる施設を運営する法人などに対するB2B向けの取組は従前から行っており、その取組について正式にサービス化したという立ち位置になる。

「(時に初期投資が必要となる)事業範囲の拡大をこれから行うため調達を行った」と解釈するより、「調達をきっかけに、すでに拡大していた事業領域を正式にサービス化した」と解釈した方が良いだろう。

4. 資金調達について

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株式会社Craftieは2017年4月に800万円調達を行っており、今回の調達が創業後2回目の調達となっている。

1回目の調達の結果新規株主に8%丁度の株を割り当てるように直前に株式分割を行っている。1回目の調達では、Post-Money Valuationを1億円として株価の設定をおこなっていたことが伺える(対して2回目の調達では、Pre-Money Valuationを5億円として株価の設定を行っただろう)。

■ プレスリリース対象の調達について

調達手法
 調達方法 第三者割当増資 
 発行株式 普通株式+優先株式(A種優先株式)
 調達時期    2018/12/21
 調達金額合計     110,000,000 円
 累積調達額      118,000,000 円
 Pre-Money Valuation 500,000,000円
普通株式による調達
 発行株式数 20,000株
 株価     500円/株
 調達金額 10,000,000円
種類株式による調達
 
発行株式数 200,000株
 株価     500円/株
 調達金額 110,000,000円

プレスリリースの対象となった調達は2つの株式を発行して行っている。
調達に伴い設けられた「A種優先株式」にて1億円、普通株式にて1000万円を調達している。公表された株主から推定すると、グローバル・ブレインからの出資についてA種優先株式、個人投資家からの出資について普通株式を発行したことが伺える。

全く同日に2種類の株式を発行しているが、優先株式(A種優先株式)と普通株式が全く同じ株価が設定されている。優先株式の株価について投資家側に交渉余地があった可能性が高い。交渉に伴う判断材料は、例えば以下があるだろう。

<交渉上、起業家にとっていい材料>
・経済合理性を考えると各種優先権が付された優先株式は普通株式と比較して価格が高く設定されるべき。
・同一ラウンドで価格を変える2種類の株式を発行することにより、会社ないし創業者は経済的な不利益を被らない(種類株がいたずらに増える場合などは不利益になり得る)
・優先株式は仮に投資家都合(ファンド内の方針により優先株式での投資のみ可能だった、など)だった可能性もある(=優先株式の条件交渉において起業家がやや強い立場にある)
<交渉上、不利に働くかもしれない材料>
・法人投資家は個人投資家より10倍高い金額を払っている。そのため増資後即会社が解散した場合最も不利益を被るのは法人投資家となっており、残余財産分配権に優先権を付与すべき対象とも言える
・個人投資家はエンジェル税制による税務メリットを得ている(可能性がある)が、法人投資家は得ていない

■ 株主について
本ラウンドにおいて、普通株式で1000万円出資を行った個人投資家について名前は明らかにされていない。ただしAngel Port上で2名の個人投資家が同社に出資を行ったことを明らかにしており、当該2名が同ラウンドで参加した可能性がある。

なお設立から2年超3年未満の特定の株主グループからの投資の合計が5/6を超えていない企業に該当するため、(他の企業条件を満たしていれば)当該ラウンドに参加した個人投資家は、エンジェル税制の優遇措置Aの対象となった可能性がある。

■ A種優先株式の内容

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グローバル・ブレインに付与した優先株式の内容を確認する。
優先残余財産分配権は×1.0倍の参加型となっている。対して、セルアウトによるExit時の取扱いを定める「金銭と引き換えにする取得請求権」について具体的な取り決めがなく、イベント時に「調整を適切に行う」旨取り決めがある。
謄本上の該当箇所は以下。

5. 前項に掲げた事由によるほか、以下の各号のいずれかに該当する場合には、当会社は優先株主及び優先株式の登録株式質権者(以下「優先登録株式質権者」という。)に対して、あらかじめ書面によりその旨並びにその事由、調整後取得価額、適用の日及びその他必要な事項を通知したうえ、取得価額の調整を適切に行う。            
(1)「合併、株式交換、株式交換による他の株式会社の発行済株式の全部の取得、株式移転、吸収分割、吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部もしくは一部の承継、又は新設分割のために取得価額の調整を必要とするとき。」
(2)(省略)

まとめ

以下所感を記載する。

・個人に対して発行する際は普通株式、法人に対しては種類株式と発行する株式を使い分け、極力種類株式を発行しないようにする姿勢が伺える。対して、種類株式(優先株式)を同一日に発行するならば、優先株式の株価を高く設定することも考えられた。
・資金調達前後に会社として取り組んだ大きなイベントはなかった。特段イベントを調達の理由にせず、顧客数やワークショップ開催数や提携法人数などの事業上のKPIを着実に積み重ね資金調達が可能な状況(=自社の価値を説明しやすい状況)になったため調達を行った、と考えて良いだろう。

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2019年1月18日から23日までに公表された企業の調達情報を、謄本ならびに周辺情報から、各ラウンドについての背景をふまえてスキームの...

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