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「seven dreamers laboratories株式会社」資金調達解説/FUNDING FACTBOOK

このnoteでは、2019年4月23日に破産手続が報じられた「seven dreamers laboratories株式会社」が、設立以降破産に至るまでに行った資本取引について振り返ります。

seven dreamers laboratories株式会社は、完全オーダーメードの「カーボンゴルフシャフト」、鼻にチューブを挿入するいびき対策の医療デバイス「ナステント」、全自動洗濯物折畳機の「ランドロイド」を開発していたハードウェア系のスタートアップです。
そのユニークな製品と、これまで累計で100億円近い金額を調達したことで知られています。

このnoteでは、seven dreamers laboratoriesが、どのように資金を集めてきたのか資金調達の状況を把握することを目的に記載しています。

留意事項:
本noteは2018年10月に取得していたseven dreamers laboratories株式会社の登記簿謄本を元に記載しています。
最新の現在申請中の登記手続完了後に謄本情報が更新されましたら適時アップデートを行います。

1. 本件に関連する製品ならびに事業体の整理

1-1.  製品と関係する事業体について
seven dreamers laboratories株式会社が扱っていた製品は、以下の3点となる。

・全自動洗濯物折畳機の「ランドロイド」
・完全オーダーメードの「カーボンゴルフシャフト」(事業譲渡済)
・鼻にチューブを挿入するいびき対策の医療デバイス「ナステント

最も注目を集めた「ランドロイド」について補足する。
2005年から開発が開始されているランドロイドについて、NEDO経由で2019年1月に公表された以下の動画を見れば、実装されていた仕様および最新の開発状況を伺いしることができる(3:30-技術的な説明がされている)。

技術的な課題により発売まで至らなかったが、洗濯物を折り畳み〜人ごとに分類されるところまで、多岐にわたる機能が研究開発されていたことが伺える。

ランドロイド含む当該製品郡の開発は、時系列を確認する限り3つの事業体が関わっている。

(1)seven dreamers laboratories株式会社

最初に、今回破産手続開始の申立を行った「seven dreamers laboratories株式会社」を紹介する。
前身となる企業が、2011年2月10日に米国デラウェア州に設立された「Seven Dreamers Laboratories,Inc.」だ。
設立者ならびに代表取締役は、当時「スーパーレジン工業株式会社」で代表取締役を務めていた阪根信一氏となっている。

当該米国法人時代に、「ナステント」「カーボンゴルフシャフト」事業の、開発ならびに国際特許出願を行っている。

(2)株式会社I.S.T

阪根信一氏の父阪根勇氏が設立した会社「株式会社I.S.T」を紹介する。株式会社I.S.Tは、1983年6月に設立された、新しい材料と製品の研究開発ならびに製造を行う会社だ。

seven dreamers laboratories株式会社の代表を務める阪根信一氏は、デラウェア大学大学院の博士課程を卒業後、2000年に同社に取締役として入社した。
その後、2003年に同社のCEO、08年には代表取締役社長に就任している(2010年に退任)。

2016年11月から阪根勇氏の娘の、阪根利子氏が代表取締役となっている。

(3)スーパーレジン工業株式会社

最後に紹介する企業が、1954年に設立された「スーパーレジン工業株式会社」だ。当該会社も、先端複合材料を用いた製品の開発を行う、株式会社I.S.Tと似た業種を営む。
設立以降(おそらく)I.S.Tと資本関係はなかったが、2008年に株式会社I.S.Tの100%子会社となったことに伴い、阪根信一氏が代表取締役に就任している。

当社は、2008年まで2015年までI.S.Tの子会社、2015年から現在まではseven dreamers laboratories株式会社の子会社となっている。

1−2. 事業体の推移

seven dreamers laboratories株式会社のHPに掲載されていた沿革(以下スクショ。現在は閲覧不可になっている)の内容並びに、上記資本関係を整理しよう。

(1)2005-2008年
2005年から「ランドロイド」、2007年から「ナステント」の開発が行われているとされている。
当該製品の開発は、阪根信一氏の発案により行われたとされること」「当該期間は、スーパーレジン工業株式会社と株式会社I.S.Tの間に資本関係は(おそらく)ないこと」を考えると、これらの事業開発は株式会社I.S.Tにて行われたものだと推測される。

(2)2008-2011年
2008年には、以下2つのイベントが起こっている。
①スーパーレジン工業株式会社が株式会社I.S.Tの100%子会社化
②阪根信一氏がスーパーレジン工業株式会社ならびに株式会社I.S.Tの代表取締役に就任
「ランドロイド」「ナステント」の研究開発をスーパーレジン工業株式会社が行っている、というseven dreamers laboratories株式会社の沿革内容を真とすると、株式会社I.S.Tで行われた研究開発が、同社に引き継がれたことが推測される。

(3)2011-2015年
2011年、seven dreamers laboratories株式会社の前身である「Seven Dreamers Laboratories,Inc」設立に伴い、スーパーレジン工業株式会社で行われていた研究開発は同社に譲渡されることになる。
seven dreamers laboratoriesの設立に際し阪根信一氏が株式会社I.S.Tの代表取締役を退任したことに伴い、各事業体の関係性は以下の通りとなる。

seven dreamers laboratories株式会社:代表取締役阪根信一氏
スーパーレジン工業株式会社:代表取締役阪根信一氏,株式会社I.S.Tの子会社
株式会社I.S.T:代表取締役阪根勇氏,スーパーレジン工業株式会社の親会社

(4)2015-2018年
seven dreamers laboratories株式会社によるSeriesAラウンドが終わった3ヶ月後の2015年11月30日に、同社がスーパーレジン工業株式会社を100%子会社化したことが発表された。
(おそらく)株式会社I.S.Tが保有するスーパーレジン工業株式会社の株式を、seven dreamers laboratories株式会社に譲渡された。

2016年11月に、株式会社I.S.Tの代表取締役に阪根利子氏が就任している。ここまでの各社の状況をまとめると、以下の通り。

seven dreamers laboratories株式会社:代表取締役阪根信一氏,スーパーレジン工業株式会社を100%保有
スーパーレジン工業株式会社:代表取締役阪根信一氏
株式会社I.S.T:代表取締役阪根利子氏

(5)2018-2019年
2018年に、seven dreamers laboratories株式会社が保有する「カーボンゴルフシャフト」を株式会社I.S.Tに事業譲渡したことが発表されている。

その他の資本関係に変化はない。

2. 「ランドロイド」「ナステント」の開発経緯

これまで各事業体で研究開発されていたことが伺いしれるが、各種事業の特許をどの事業体が出願したのか確認する。

以下に、J-platpatによる検索結果のスクリーンショットを貼り付けしている。#2-#6は「ナステント」に関する特許でその出願は2010/9-2011/11に行われている。
概ね当該事業の特許は、seven dreamers laboratories株式会社の前身である「Seven Dreamers Laboratories,Inc」が設立された後行われた。

対して、「ランドロイド」に関する特許である#7-#11は、「Seven Dreamers Laboratories,Inc」設立前の2007年から出願されていた。これらの特許が告知並びに登録された日は「Seven Dreamers Laboratories,Inc」設立後となっている。
基礎技術の開発が完了したことをもって、その関連特許を保有する法人としてSeven Dreamers Laboratoriesが設立されたことが推測される。

特許申請スケジュールをふまえ、各事業に関する事業体の推移をまとめると、以下の通りとなる。

3. seven dreamers laboratoriesの資本政策の確認

次に、seven dreamers laboratories単体の資本政策を確認する。

2018年10月に取得していた登記簿謄本から、これまでの資金調達を上記にまとめた。「第三者割当」と記載した取引は、全て普通株による第三者割当増資を表している。

これまで、seven dreamers laboratoriesは(一部謄本に反映されない期間もあるが)25回第三者割当を行っているが、2016年3月15日の調達、2016年8月29日の調達の2回しか株価を変えていないことが伺える。

seven dreamers laboratoriesが行った資金調達の特徴を以下2点にまとめた。
 ①全て普通株を用いた第三者割当により調達を行った
 ②価格を変えずに長期間多数回にわけて調達を行っている

このnoteでは、会社が行った資金調達のプレスリリースに対応する形で、SeriesA - B' 2nd の4回にラウンドが別れているものとみなして、各ラウンドについて解説を行う。

3-1. SeriesA Round 2014/12/16 - 2015/8/31

機関について

第1期が終わる2015年3月には、取締役としてrobotics事業部 事業部長を務めた尾崎氏(2017年9月に辞任)他取締役2名ならびに監査役1名が就任し、取締役会設置会社になっている。

第1期の期末日時点で資本金は9億2000万円まで達しており、この時点で会社法大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)に該当している。

会社法大会社に該当し会計監査人の設置が必要となったことに従い、2015年6月末に新日本有限責任監査法人が会計監査人に就任している(後、2017年9月に辞任している)。

資金調達について
SeriesAラウンドは、2014年12月に行った10億円強(この金額は推定)の調達から開始して合計8回にわけて行われた。投資家の名前として、事業会社・金融機関等から調達を行っている。

昨今のベンチャー投資の際には、投資家保護色が強い優先株式にて調達する事例も多いが、本件については普通株で調達を行っている。
投資家の名前の中に、大学系VCである「株式会社東京大学エッジキャピタル/UTEC」の名前もあるが、独立系VC・銀行系VCと比較して出資時に(時に)優先株を必須条件としない傾向もあり、このような調達方式になったことが推測される。

当該期間の資金調達については、2015年6月にSeriesAとして15.2億円調達した旨プレスリリースを発表している。
対して同一のValuationで2015年8月に1.8億円を調達しているため、当該8月の調達までを同一のラウンドと判断している。

体制について
2016年2月には、従業員が70名に達している。

同社が掲載していた研究開発系の求人媒体を見る限り、中途採用における想定年収は600-800万円となっている。
仮に70名・平均年収700万円と仮定すると、この時点で年間5億円程度の人件費が生じている計算になる。

3-2. SeriesB 2016/3/15 - 2016/4/8 

ランドロイド事業の発表
Series Aラウンドが終了した2ヶ月後に、世界初の全自動洗濯物折畳機と銘打って「ランドロイド」が発表された。
折り畳み基盤技術の開発が一段落したタイミングで当該製品を発表しており、製造・販売に向けた商品化ステージの段階で、パナソニック並びに大和ハウス工業との合弁会社を2016年3月に設立し、そこで共同開発を行う形をとっている。

2016年10月には、2017年3月からβ版の製品を予約開始する旨発表を行っている。
当該発表中ではこの時点でハードウェアの開発はある程度完了していることを述べており、この時点では開発が順調だったと社内では認識していたことが伺える(当然、「そう外部に思わせたかった」と悲観的にみることもできる)。

資金調達について
当該子会社設立のタイミングにあわせて行った資金調達が、当該ラウンドの資金調達だ。
前述の通りこの資金調達は全て普通株で実施されている。本体で、Pre100億円で、38億円の資金を調達している。
株主として、合弁会社を一緒に設立したパナソニック株式会社・大和ハウス工業の他、SBIインベストメント株式会社の名前が以下のプレスリリース上記載されている。

発表された金額60億円と、登記簿謄本で確認できた資金調達額38億円との差分は、子会社に出資された費用だと推計される(現在登記申請中につき確認は後日)。

3-3. SeriesB‘ Round 2016/8/29 - 2017/5/15

「ナステント」の自主回収
seven dreamers laboratoriesの事業上、はじめて出た悪いニュースが2017年1月に発表された「ナステント」の自主回収についてだ。
鼻腔に直接入れるタイプの医療デバイス「ナステント」について、顧客が誤飲する事例が生じたため、販売停止並びに自主回収を行った

自主回収の結果ナステントについて、使用するに際して医療機関にて受診が必要ということになった。当該自主回収の結果、ナステントを顧客が利用するハードルが上がってしまったことが推測できる。

ランドロイドの販売延期
2017年3月にβ版を販売予定していたランドロイドだが、β版の予定通りの販売スケジュールから延期されていた。
この延期期間においても、「ランドロイド カフェ」を表参道にオープン・Cerevo並びにエアークローゼットとの協働開始を発表など、PRは盛んに行っていたが、2017年9月に正式に開発延期が発表された

当該ランドロイドの開発に苦戦している時に、同時に行っていた資金調達が当ラウンドだ。
海外の個人投資家や事業会社、金融機関等を中心に、普通株を用いて18.9億円を調達している。

機関の状況
2017年5月に、監査役会設置会社となっている。仮に事業状況が円滑に行った場合早期の上場の可能性を睨んでいたか、もしくはこの時点で投資金額の相当程度を溶かしていたため、投資家の要望によりモニタリング体制を強化した可能性もあるだろう。

決算の状況

ラウンド中に決算を迎えた第三期における決算情報が、官報に掲載されていたので紹介する。
売上高がこの時点で4.8億円に達している。対して、研究開発費を含む販管費が23.7億円を計上している。
第三期末時点で73億円を調達しているが、BSの流動資産の金額を確認する限り、資金残量が最高でも24.6億円残っていることが伺える(=50億円近くを何らかの費用並びに資産に投下済)。

3-4. SeriesB' 2nd 2018/3/30 - 2018/8/30

倒産発表前に行われた最後の資金調達が当ラウンドとなる。この期間中、既に述べた通り、カーボンシャフト事業を2018年11月にI.S.Tに売却している。

当該ラウンドにおいて普通株にて10億円の調達を行っている。投資家は「パナソニック」「大和ハウス工業」、つまりランドロイド事業を営む子会社に対して協働出資をしている2社による出資だった。

当然にこの2社は、seven dreamers laboratories本体ならびに子会社の不調を当然認識しており、事業の不調を知っていてなお本体を救うために出資をしたことが伺える。

決算の状況

2018年3月末の決算が2018年8月に発表されているため紹介する。BS上の流動資産(5.7億円)から分かる通り、既に資金のほぼ全量がこの時点で使われており、資金繰に懸念があったことが推測される。

販管費は前期と同様20億円以上計上されている。
2017年12月の時点で100名以上の従業員が在籍していることから、販管費の半分程度は人件費により構成されていたことが伺え、販管費の削減による財務状況の改善が難しかったことが推測される。

さいごに 

このnoteでは、seven dreamers laboratories株式会社の資金調達についてまとめを行いました。

資金調達のスキーム自体は、普通株によるシンプルな調達方法により金額を調達できていました。
対して、SeriesA 2ndとこのnoteで読んだラウンド以降、中々Valuationがあげられなくて苦労している様子も伺えます。

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